【GT300】

2013年4月 6日

スバルBRZ GT300、ミシュランでの初戦でいきなりポールポジション!

2013 AUTOBACS SUPER GT第1戦

OKAYAMA GT 300KM RACE

4月6日(土) 公式予選

岡山国際サーキット(岡山県美作市):全長3.703km

入場者数:8,000人(主催者発表)

 2013年のSUPER GTが例年通り岡山国際サーキットで開幕しました。

 今年のGT300クラスは、昨年以上の激戦。昨年は1台だったメルセデスベンツSLS AMG GT3が5台に増え、同じく日産GT-R NISMO GT3が4台、ホンダCR-Zは2台になりました。その他にもマクラーレンMP4-12C GT3が新たに加わるなど、総勢25台ものマシンが参戦しています。

 そしてこのGT300クラスに、3年ぶりにミシュラン・パートナーが復活します。

 マシンは、昨年市販車の登場と共にSUPER GTにも登場したFRスポーツカー、スバルBRZ。今年はJAF-GTの規則変更に合わせ、マシンをさらにポテンシャルアップさせ、No.61 スバルBRZ GT300として世界の強豪たちに闘いを挑みます。
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■練習走行

 朝から薄曇りだった天気は、練習走行が始まる午前9時までなんとか持ちこたえてスタート。各車ドライタイヤを装着してコースインしました。

 しかし予報どおりの雨が降り出し、1時間の走行の間に赤旗中断が2回。かなりの雨量のため、緊迫したセッションとなりました。

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 ところでみなさん、練習走行とは、一体何をする時間なのかご存じですか?

 ドライバーはみな超一流の腕前。ですから、彼らが運転の練習するために走るのではありません。

 マシンのウォームアップ? それはあります。

 しかし本当の狙いは、チームごとの作戦をシミュレーションしたり、タイヤ選択を決定するための情報を、実際に走って収集することなのです。

 それでは、No.61 スバルBRZ GT300が具体的には何をしたのか?

 それを日本ミシュランタイヤの小田島広明モータースポーツマネージャーにたずねてみました。

「練習走行では、これまでテストで得たデータの『再現性』をチェックしました。今回は最初がドライタイヤで、これに対してセッティングを1回変更。そのあとすぐに雨が降り出したので、ウェットタイヤを2種類試しました」

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 事前テストで作られた数々のレーシングタイヤたち。その中から、今回の状況に対してふさわしいと思うものを履かせ、テストと同じ性能を発揮しているかを「確認」する。

 これが今回の練習走行でNo.61 スバルBRZ GT300とミシュランタイヤが取ったメニューでした。

■予選第1セッション(Q1)

 午後2時から10分遅れてスタートしたGT300クラスの公式予選。

 嵐の可能性もあると思われた天候でしたが、実際、午前中よりもさらに雨の降り方が激しくなっていました。

 今回の予選は、F1と同じノックアウト方式です。昨年は予選第3セッション(Q3)まであった予選ですが、今年は『ドライバーの実力が順位に大きく影響するように』という狙いから、Q1とQ2の2セッションになりました。これまではQ2でBドライバーが順位を伸ばせなくても、何とかこれを通過しさえすれば、Q3で再びAドライバーが乗ることができたからです。

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 各車コースインした計測1周目。ランボルギーニがコースアウトを喫したため、予選はいきなり赤旗中断。残念ながらランボルギーニは、これで出走権利を失ってしまいます。しかしながらこれは、序章にすぎませんでした。

 午後2時25分に再び各車コースイン。今度はメルセデスがスピン。その後も様々なマシンがスピンとコースアウトを繰り返すという、非常に厳しいコンディションです。

 その中でNo.61 スバルBRZ GT300をドライブする山野哲也は慎重に周回を重ねました。4位から5位のタイムをマークしながら、Q2進出を狙います。

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 しかし、その後はタイムをなかなか伸ばせず、徐々に順位を後退。さらには第2コーナーでスピンを喫しました。何とかマシンをコース内へ収め、赤旗を免れた山野。そしてアタックラップに突入するのですが......今度はアウディR8が同じ場所でコースアウト。これで2度目の赤旗中断となりました。

 残り時間3分で再開されたQ1。Q2に進出できる13台の枠をかけて各車一斉にコースインしていきます。
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 しかし山野は、前車との間隔を空けてゆっくりとピットを出ます。狙いは、1回だけのタイムアタックでした。

 しかし......。コースインした周回でまたもランボルギーニがスピン&クラッシュ。審査委員会が協議を重ねた結果、これでQ1は終了になってしまいました。

 結果として13位にいたNo.61 スバルBRZ GT300は、ぎりぎりQ2へ進出。佐々木考太にバトンを渡すのでした。

■予選第2セッション(Q2)

 午後3時45分、Q2がスタートします。若干雨量が少なくなった中、GT-Rやポルシェといった強豪たちがトップタイムを交互にマーク。そのとき、No.61 スバルBRZ GT300のステアリングを握る佐々木考太は4位のタイムを刻んでいました。そして周回を重ねるごとに3位、2位と上り詰め、残り3分の時点でセクター1全体ベストを記録。4周目にはついにトップタイムを叩き出しました。そのタイムは1分41秒040。2位の日産GT-Rは1分42秒107、実に1秒以上の差をつけてポールポジションを獲得したのでした。
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山野哲也 (No.61 スバルBRZ GT300/スバルBRZ R&Dスポーツ)のコメント:
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「第2コーナーからモスエス(高速S字区間)にかけての水たまりがひどかった。僕たちのクルマはFIA-GTの一番重いクルマと較べて200kgぐらい軽く、ヘビーウェットに弱いんです。この雨量ではハイドロプレーニングが起きてしまい、水が少ないラインを通らなければならなかった。午前中に出せたタイムに、まったく届かない状況でした。

 僕の使命としては、(佐々木)孝太につなぐことを第一としていました。コースアウトしても終わり、ひとつ抜かれても終わり。本当に苦しい状況でしたね。

 雨が少ないときはふたりとも1分39〜40秒で走っていたので、Q2は雨が少なければいけると思っていました。それが天候も含めて、ギリギリのところでうまくいって。人生の中でポールポジションって、なかなか獲れないものなんです。だからとても嬉しいですね。

 それでも、ライバルたちの安定感の高さなど、自分たちに足りないところはまだまだあります。ある意味、今回はBRZを鍛え上げて行くための第1戦なのだと思います」

佐々木考太 (No.61 スバルBRZ GT300/スバルBRZ R&Dスポーツ)のコメント:

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「今回の予選での僕らはQ1を通過することがそもそもの目標でした。そういう意味では、今回のアタックドライバーは山野さんです。あの状態でQ2に残ってくれたことに感謝しています。

 次に、僕たちは雨の経験が少なかったので、とにかくたくさん走りたかった。ミシュランのレインタイヤをもっと理解したかったわけです。

 Q2では雨の量が多くて大変でした。タイヤはミディアムを選択したのですが、『チョイスを失敗したかな......』と思うくらい雨量が多かった。前のクルマのラインを確認しながら、少しずつタイヤを温めていったら、段々とグリップが上がってきました」

 明日のレースの結果は誰にも分からないでしょう。でも、一番からスタートするというのは、一番リスクが少ないということなので、それはよかったです。

 ただ、自分はアルテッツァで走っていた頃から、ポルシェ、GT300とミシュランタイヤに乗り続けていて、その『乗り方』を分かっているつもりです。そして、ミシュランタイヤが自分のスタイルに合っていると思っています。それだけでも自分にとってはプラスです。

 それにしても、久しぶりにポールポジションの記者会見に出ることができてうれしかったです。明日も優勝の記者会見に出られるようにしたいですね」

スバルテクニカインターナショナル(株) モータースポーツプロジェクト室 辰巳英治氏のコメント:
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「とにかく『ぶつからないで終わってくれ!』と思っていました(笑)。もうちょっと雨が弱ければ、いけるとは思っていたんですが。午前中の練習走行ではトップタイムが出ていましたからね。

 Q1は苦しかったと思います。山野選手がよくもたせてくれました。そして、佐々木選手の直前にね......ほんと1分前というくらいのところでリアのスタビライザーを外したんです。山野選手がQ1を走った後、チームと話し合って決めたんです。これがうまくいったのだと思います。

 ドライコンディションは公式テストで走り込んで、ほぼトップタイムが出ています。完璧ではないですけれど、今日の予選ですべての路面を経験できて、どういう路面になっても勝負ができるということはつかめました。

 我々のBZRは、全体的な軽量化と、さらなる低重心化を推し進めました。そして、エンジンやミッションといったパーツを、できるかぎり真ん中に集め、慣性重量マスを減らしました。タイヤも含めて、去年一年間大苦戦してきた内容をひとつひとつ潰して、総合力やチーム力を上げてきました。そしてチームが一丸になれたことが、今日、実を結んだんだと思います」

日本ミシュランタイヤ(株) モータースポーツマネージャー 小田島広明とのQ&A:
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Q:今日の公式予選についての総合的な評価は?

A:「結果としてみれば、GT500もGT300もポールポジションを獲れました。タイヤのパフォーマンスとしては、結果を残すことができたと思います」。

Q:ウェット用のタイヤは何種類あるのでしょうか?
A:「ウェット用のタイヤの種類は、GT500用は3種類、GT300用は2種類です。溝の深さは1種類。基準となるタイヤを『ノーマル』と呼ぶなら、それに対してドライ寄りなのかウェット寄りなのかという幅で用意します。GTはレギュレーションで持ち込めるタイヤのセット数は決まっています。そこで、溝の種類もいろいろ用意してしまうと、それぞれに構造を数種類、コンパウンドを数種類用意しなければならなくなり、数が増えてしまいます。私たちは1種類の溝にすることで効率的に本数を絞り、ここまで結果を出してきています」。

Q:ミシュランのタイヤは、ウェット用なのにドライ路面にも適応できたり、ドライ用なのにある程度のウェット路面も走りきってしまう印象があります。そうした幅を持たせることが強さの秘訣ですか?
A:「我々ミシュランのタイヤの設計コンセプトは、高性能を維持しつつ、なるべく幅広く対応できるタイヤを目指しています。ウェット用なのにドライ路面にも適応できたり、ドライ用なのにある程度のウェット路面も走りきってしまうことができるのも、そうした幅を持たせることがレースにおける強さとえています。設計側からすると、ピンポイントな状況に対応したタイヤの方が作りやすいんです。対して、いろんな状況に合わせられる『幅広く対応できるタイヤ』を作る方が難しい。しかし、それができれば勝つ確率は高くなる。もちろんピンポイントの状況ばかりが続いてしまえば、そちらが速いですが。どちらを選んでいるか、ということなのだと思います」。

Q:佐々木考太選手が「ミシュランタイヤの乗りこなし方がある」とコメントしていましたが、それはどういうことでしょうか?

A:「私は技術者なので、乗り方は分かりません(笑)。しかし、基本どおりに乗ってもらえれば必ず結果が出せると考えています。

 メーカーごとにタイヤの個性は絶対にあると思います。これはレーシングタイヤにかぎらず、一般タイヤにおいても同じ。ただし、市販タイヤの場合は幅広い条件とユーザーに対応しているので分かりにくいかもしれない。それでもクルマ好きな方が乗れば、『これはミシュランだね』『これはどこどこだね』と分かると思います。そして、その特徴が際立っているのがレーシングタイヤなんです。目的がハッキリしていますから。

 佐々木選手は今までいろいろなクルマでミシュランに乗っています。だから、彼の言うことは間違いではないと思います。

一つの例として、佐々木選手は、ミシュランタイヤは「進入が速い」と言っていましたが、データやセクタータイムの区分けなどで推測できるのは、我々のタイヤは高速コーナーでのコーナリングスピードがとても速いということです。そして、これがアドバンテージになっています。あまり車速を落とさないでコーナーに飛び込んでいける。確かにそれが特徴だと思います」。

Q:GT500とGT300のタイヤは開発上でリンクしますか?

A:「今年、GT300クラスに復帰したのも、STIさんから要望があったこともありますが、GT500とGT300のタイヤは開発上でリンクがあるからGT300のBRZを今年やっています。共通項が多いので、GT500のリソースを使って開発しています。目に見えるものはサイズですが、構造やゴムにも共通性は見られます」。

Q:決勝レースのコンディションに関してはどのように考えていますか?
A:「決勝レースのコンディションに関しては、今日(4月6日)の雨は夜中に上がる予報で、朝またパラパラと降って、あとは曇りです。問題は、最高気温が10℃くらいになることです。レーシングタイヤは温度によって性能が大きく変わります。対応レンジが合うタイヤを持っていくためには天候を知ることが必要です。そうした知識があるからといって、そこにうまくはまるかは別ですが、タイヤは生き物ですからね」。