【GT300】

2013年9月20日

SGTクラス特別開催のアジアン・ル・マン第2戦富士が開幕。フリープラクティス1はスバルBRZ GT300がトップタイム!

2013年Asian LMS(アジアン・ル・マン・シリーズ)第2戦

3 Hours of Fuji

9月20日(金) フリープラクティス1

富士スピードウェイ(静岡県駿東郡):全長4.563km

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 アメリカとヨーロッパに続く3つ目のル・マン・シリーズとして今年から開催されているアジアン・ル・マン・シリーズ(アジアンLMS)。富士スピードウェイを舞台とする第2戦の1回目のフリープラクティスが行われ、今回特別に設けられた「SGTクラス」に出場する唯一のミシュランタイヤ装着車であるスバルBRZ R&DスポーツのスバルBRZ GT300が同クラスのトップタイムを叩き出しました。

 ル・マン・プロトタイプ(LM P1/LM P2)やFIA GT3規定に準じた車両、平たく言えばル・マン24時間に出るようなマシンがそもそもの出場車両となるアジアンLMSですが、今回の第2戦富士では、ル・マン24時間の主催者でこのシリーズも統括するACO(Automobile Club de l'Ouest=西部自動車クラブ)と、SUPER GTのプロモーターであるGTアソシエイション(GTA)の合意により、SUPER GTにシリーズ参戦しているGT300車両を対象とする「SGTクラス」が特別に設けられました。

 そして同クラスの1位から10位までの車両にはSUPER GTシリーズのドライバーポイントとチームポイントが与えられるという特別措置が取られることに。SUPER GT GT300クラスのシリーズ上位を狙うにあたっては必須とも言えるポイント上乗せのチャンスとなったことから、最終的には10台のGT300車両が今回の「SGTクラス」に乗り込んできました。

 GT300クラスで唯一ミシュランタイヤを使用しているスバルBRZ R&DスポーツのNo.61 スバルBRZ GT300もその1台で、先のSUPER GT第6戦富士を終えた段階でシリーズランキング3位につけている山野哲也/佐々木孝太のレギュラーコンビがこのレースでもステアリングを握ります。

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 今回のレースのポイントのひとつは、通常のSUPER GTのシリーズ戦で背負っているハンディウェイトを搭載せずに戦えることです。No.61 スバルBRZ GT300の場合、先のSUPER GT第6戦富士には88kgのウェイトを積んで出場しましたが、今回はこれをすべて降ろした状態でレースに臨むわけで、その速さをより一層際立たせることになるはずです。

 なお、アジアンLMSではシーズンを通してひとつのメーカーが供給するレース用市販タイヤを使用しなければならない規定になっており、今年はミシュランがそのサプライヤーを務めていますが、「SGTクラス」にはこのワンメイクタイヤの使用は適用されず、各車両は普段のSUPER GTで使用しているものと同条件のタイヤを使って走行します。

■フリープラクティス1

 レーススケジュールはアジアンLMSのものに則って行われることから、現在のSUPER GTでは走行セッションが設けられていないレースウィークの金曜日から走行が始まりました。午後1時からスタートしたフリープラクティス1では、アジアンLMS本来の開催クラスであるLM P2クラスに2台、GTEクラスに1台、GTCクラスに6台が出走。これに「SGTクラス」のGT300車両10台が加わりました。

 秋晴れの中で迎えたセッションの開始直後の気温は29℃で路面温度は41℃。猛暑の夏に比べればだいぶ涼しくなったと言えるコンディションで1時間にわたるセッションは推移しました。その序盤で好タイムを出してきたのは、SUPER GTシリーズではこれまで苦戦を強いられてきていたNo.2 マクラーレンMP4-12C GT3でした。同車が1分39秒666を刻んでまずトップに立ちましたが、これをランキング2位につけるNo.11 メルセデス・ベンツSLS AMG GT3が逆転。その直後にランキングトップのNo.16 ホンダCR-Z GTが1分39秒297をマークして上回っていく、という目まぐるしい展開となりました。

 上位6台までが早々に1分39秒台にラップタイムを入れてきたのをよそに、山野哲也がドライブするNo.61 スバルBRZ GT300は自分のペースで徐々にタイムを上げていきました。そしてセッション開始から20分を過ぎた時点で1分40秒101をマークし、23分過ぎには1分39秒281へとタイムアップ。最終的に山野は1分39秒049にまでタイムを切り詰めてみせました。なおこのタイムは、このセッションに出走した全19台の中でも2台のLM P2車両に次ぐ3位となる速さでした。

 セッションも残り3分というところでトラブルに見舞われたNo.2 マクラーレンMP4-12C GT3がホームストレート上でマシンを止めましたが、赤旗中断もなくフリープラクティス1は終了。山野からステアリングを引き継いでNo.61 スバルBRZ GT300に乗り込んだ佐々木孝太も1分39秒322という好タイムを記録して、このレースウィーク最初の走行を終えました。

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山野哲也 (No.61 スバルBRZ GT300/スバルBRZ R&Dスポーツ)のコメント:

「今回はウェイトが降りたということもあり、マシンの方向性をこれまでのコーナリング重視からストレート重視へと大きく変えました。具体的には、リアウイングをよりダウンフォースの少ないものに変更し、ガーニーフラップなどは取り去ったり角度をより寝かせたりするようにしたんです。それに伴って不安定になるリアは、車高を基本セッティングよりも下げて対応しました。そうすると空気抵抗が減って確実に最高速が伸びました。ダウンフォースが減った分、これまで速かったセクター2やセクター3でのタイムは若干落ちましたが、セクター1での取り分がそれを上回りました。

 マシンの速度域が上がったことで、ミシュランタイヤのいい面も感じ取れるようになりました。速度域が高いところを軽い状態のクルマで走ったときの安定性の高さは、やはりル・マンで結果を出しているタイヤだと感じました。これまでBRZは『コーナーが速く、ストレートが遅いクルマ』と言われてきましたが、これで『コーナーが速く、ストレートでも置いてかれないクルマ』になったと思います(笑)」

佐々木孝太 (No.61 スバルBRZ GT300/スバルBRZ R&Dスポーツ)のコメント:

「確かにタイムは出ましたけど、まだ一発だけですから、気を抜くわけにはいきません。もっとコンスタントにタイムを出せるようにしないといけないですね。今回はシーズン中にないほど大きく方向性を変えたので、レースを戦うにはまだ不安定な部分が多いです。『最高速重視のセッティングを施した』というよりは、1時間というセッションの枠の中で、そういう方向性を『試した』という段階だと思います。このフリープラクティスでの結果を踏まえてエンジニアが明日までにうまくバランスを調整してくれることに期待しています。もちろん、やってくれると思いますよ。

 明日の予選は、これまでのデータもありますから、いつもの流れを引き寄せられると思います。それよりも、今回試した『ロー・ダウンフォース仕様』をきっちり作り込むことで、このあとの闘いに活かしたい。同じこの富士スピードウェイで行われるJAFグランプリ(FUJI SPRINT CUP)や来シーズンの闘い方に役立てたいですね。

 タイヤはこれまでどおりバッチリです。グリップも安定している。ただ、マシンのセットアップをもっとしっかり出せれば、このタイヤのオイシイところをさらに引き出せると思っています」

スバルテクニカインターナショナル(株) モータースポーツプロジェクト室 辰己英治氏のコメント:

「今回のフリープラクティスでは決勝レースに向けたセッティングを試しました。先日の第6戦の結果(予選4位/決勝9位)から、やはりストレートで抜かれないマシンにしないとダメだと痛感したからです。結果的には、良い方向へ進んだと思います。BRZはもともとのパワーがないので、ストレートは諦めていたところがありました。しかし、今回の変更だけでトップスピードが270km/hを超えましたからね。『ウチのクルマでもこんなに出るんだ!?』って驚いたくらいです(笑)。それは冗談としても、これまでにない新しい挑戦ができたことで、BRZはまたひとつ引き出しを増やすことができました。

 最高速を伸ばす方向に仕様を振ってもミシュランタイヤはしっかりと荷重を受け止めてくれています。だからコーナーでも相変わらずライバルたちより速いんです。これはツインリンクもてぎで行われる最終戦などでも活きてくるのでないかと思っています」

日本ミシュランタイヤ(株) モータースポーツマネージャー 小田島広明とのQ&A:

Q:今回のレースは、ふたつのレースシリーズ(アジアンLMSとSUPER GT)が混走するという特殊なものですが、ミシュランとしてはどのような立ち位置で臨んでいるのでしょうか?

「まずひとつは、ミシュランがアジアン・ル・マン・シリーズにおけるオフィシャルタイヤサプライヤーであるという立ち位置です。その日本ラウンドのサポートとして、我々日本ミシュランタイヤはアジアのミシュラン・グループと一緒に活動しています。そしてもうひとつは、No.61 スバルBRZ GT300のタイヤサービスです。アジアンLMSはコントロールタイヤですし、SUPER GTに関しては今回はGT500がいない分、普段より状況はシンプルかもしれませんね(笑)」

Q:アジアンLMSで使われているコントロールタイヤとは、どういうキャラクターのものなのでしょうか?

「コントロールタイヤとは、同じクラスのすべての車両が同じものを履くワンメイクタイヤのことを意味しています。ワンメイクタイヤは、どういう車両にも、どういう環境にも対応できる幅の広さを持っていなければなりません。高い性能を有した上で、汎用性がなければいけない。また、耐久レースを走り抜き、それぞれのスティントにおいてチーム側の作戦に応えられるタイヤであることが大切です。このアジアンLMSで使われるタイヤはドライ/レインそれぞれ一種類ずつです」

Q:SUPER GTのBRZ GT300が履くタイヤとアジアンLMSのGTクラス用のコントロールタイヤでは、どのような性能差があるのでしょうか?

「それは一概には言えません。なぜなら、BRZが履くタイヤは、このマシンがSUPER GTを戦うために、それぞれのコースや季節に合わせて専用に作り込まれたタイヤだからです。それに対して、アジアンLMSのGTクラス用コントロールタイヤは、このシリーズ全体を通して使われるタイヤです。富士専用というのではなく、シリーズ全4戦(韓国/日本/中国/マレーシア)のすべてのコースで同じものを使います。この富士での性能だけを見ればSUPER GT用のタイヤの方が高い性能を持っているように見えるかもしれませんが、そもそもの目的が異なるということです」

Q:今回、BRZ GT300は88kgのハンディウェイトを降ろし、フリープラクティス1ではこれまでとは異なるセッティングを模索していました。これに対するタイヤのマッチングはどうでしょうか?

「まだ1時間しか走っていないですから、マッチングという段階までは行っていません。とりあえずSGTクラスの中ではいい位置につけていますが、逆に言えばそれだけです。結果的にはタイムも良かった。タイヤの性能としては想定範囲にありました」

Q:山野選手が「速度域が上がるほど、ミシュランの良さを感じられた」とコメントしていましたが?

「ドライバーのフィーリングに対して技術的にコメントすることは容易ではありません(笑)。ただ、速度域が高くなればなるほど、タイヤにはクオリティが求められる、ということは言えます。速度域が高くなれば、単に『横グリップが高い』ということではなく、タイヤ全体で性能を発揮することが求められるようになるのです。

 今回BRZは、これまで到達できていなかった速度域に来たわけです。その状況下でもドライバーがマシンに不安を感じなかったのは、タイヤが全体的にきちんと性能を発揮したからだと思います。そしてこの『安心感』は、レースタイヤに限らず、市販タイヤにおいても我々が大切にしている性能なんです」