【2014】

2014年4月 5日

スバルBRZ R&D SPORT 2014年シーズンの展望 「"強いBRZ"を目指し、決勝で結果を残すことに焦点を絞って戦っていきます」

昨年はシリーズ全8戦のうち5戦でポールポジションを獲得し、シリーズランキング4位となったNo.61 スバルBRZ R&D SPORT。今年もGT300クラスでミシュランタイヤの独占供給を受ける同車は、勇退した山野哲也に代わって若手の井口卓人を新たに起用し、チーム在籍5年目となる佐々木孝太とのコンビで参戦します。

ミシュランとのパートナーシップも2年目となり、いよいよシリーズチャンピオンを目指す同車ですが、その2014年シーズンの展望を、スバルのモータースポーツ車両の技術面を統括されているスバルテクニカインターナショナル株式会社 モータースポーツプロジェクト室の辰己英治氏にお聞きしました。

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Q:2014年仕様のスバルBRZ GT300ですが、昨年から大きく変わった部分は?

「マシンとしては大きくは変わっていません。BRZ GT300が則っているJAFーGT300のレギュレーションにも変更がありませんし、(競争力不足などの理由によって)変えなければならない部分というものもありませんでした。

 本当は、チームとしてはマシンをさらに速くするために技術的にチャレンジしたかったところもいろいろあったはずなのですが、私の方針としてそれをやめさせたんです」

Q:その理由は?

「BRZ GT300は現状でも十分以上の速さを持っているからです。昨年が遅くてどうしようもなかったならマシンを作り直さなければいけなかったと思いますが、そうではなかった。それよりも、いま我々が必要なものは、その速さを安定させることなのです。

 仮にイチからマシンを作ってしまうと、エンジニアやメカニック、そしてドライバーが大きく変わったマシンのことを理解するためにかなりの時間を費やすことになり、オフシーズン中にシーズンを見越したテストができなくなってしまいます。実は昨年がまさにそんな調子だったんですよ。それに比べて今年はオフシーズンの間のテスト回数をずいぶん増やすことができました。その結果をタイムとして残すことはできていませんが、それはいろいろなトライを行っていたからなんです」

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Q:車高は昨年と同じ(最低地上高8mm)ですか?

「昨年と変わりありません。ですから、(当初の仕様に対して)上がった車高が基本となるように、サスペンションアームのピボット位置を微調整するという程度のことは行いました」

Q:オフシーズン中のテストの感触はいかがでしたか?

「ミシュランタイヤの特性をさらに見極め、様々な状況の中でクルマとタイヤのバランスを取り、スタッフみんなの引き出しを増やすことができたと思います。

 テーマは、昨年我々が苦手としていたロングランと環境の変化への対応の能力を高めることでした。BRZ GT300は昨年5回ポールポジションを獲得していますが、決勝レースでの取りこぼしが多かった。そして寒い時期にタイヤをうまく機能させることができませんでした。このふたつを大きな反省材料として、その克服をテーマにセッティングを熟成させました。実のところ、昨年、ロングのテストができたのは鈴鹿だけだったんです(そしてレースでは優勝)」

Q:ただ、BRZ GT300にはストレートスピードでライバルに劣るというハンデがあります。そのために予選で上位にいなければいけない事情があったと理解しているのですが?

「もちろんそれはそうなのですが、それと『ポールポジションを死守すること』は似ているようでまるで違うんです。予選で必要なのは、決勝に向けて十分な競争力、直接的には第1スティントで使用するタイヤのグリップ力を温存させた上で、ベストなポジションを得ること。ですから、今年は1回もポールポジションを獲れないかもしれませんよ(笑)。まぁ、そのくらい、現在の我々は決勝レースを見据えているということです」

Q:予選と決勝でセッティングを変更すれば対応できるのではありませんか?

「それではタイヤがきつくなるんです。SUPER GTは、予選で使ったAセットかBセットのタイヤのどちらかが抽選によって選ばれてスタートタイヤになります。ですから、ポールポジションを獲るために予選でタイヤを使い切ってしまったら、決勝の第1スティントは確実にライフが短くなってしまう。でも昨年は"何としてもポールを獲る"という雰囲気がチームの中で支配的になってしまっていて、分かっていてもタイヤを使い切ってしまっていたんです。

 ただし、昨年のレースで1回だけ、それを打破する出来事がありました。第7戦のオートポリスです。予選で(佐々木)孝太がスピンを喫してタイヤにフラットスポットを作ってしまったのですが、運が悪いことにそれが抽選で決勝のスタートタイヤに当てられてしまったんです。実際にそれで走ることはできませんでしたから、我々はペナルティを受けてでもニュータイヤを使うことを選び、ピットスタートとなりました。にもかかわらず、レースは7位でフィニッシュしました。それも、レース中にスピンまでして。これがどういうことかと言えば、実質的に最後尾からスタートしても、我々は6位には入れる実力があったということです。"ならば、予選で10位に終わってたとしても、決勝では何位にまで上がれたの?"とチームで話し合いました。

 得意なコースでは優勝を狙うけど、勝てない状況でも勝とうとして無駄なエネルギーを使うようなことはせず、できるだけたくさんのポイントを獲得するように努めるまでとする。今年は『速いBRZ』ではなく『強いBRZ』になることが大切なんです」

Q:具体的にどのようなことをされているのでしょうか?

「タイヤのグリップを長く持たせるセッティングを探しています。いくらミシュランタイヤのグリップが高いといっても、ゴムが残っていなければ勝てませんから」

Q:タイムを出しにいくセッティングとタイヤを持たせるセッティングでは、それほど大きく違いますか?

「まだ明確ではないですけれど、違いますね。BRZ GT300に関してしか言えませんが、競争力のあるタイムを記録することができながらタイヤに優しいセッティングというものが確かにあるんです。そして、予選で速いセッティングがタイヤを傷める傾向であることも分かりました。

 ですから今年の予選では、ドライバーは"早めにそこそこいいタイムを出して、すぐにピットに帰って来て!"という感じです。"15分間、みっちり走ったりはしないでね"ということですね(笑)」

Q:チームには新たに井口卓人選手が加入しましたが、これまでのところどのように評価されていますか?

「井口の加入は大きいです。彼はすぐにタイムを出せるドライバーですから、結果的にタイヤをいたわることができるんです。タイヤが温まり切らなくても、そこそこ以上のタイムを出せる。これはQ1突破などでも武器になると思いますし、タイヤを温存させることにも役立つと思います。13位に入ればQ1は突破できるわけですからね。これが井口を採用した大きな理由です。孝太はすでに実力を証明済みのドライバーですから、このふたりのコンビはかなり強力だと思っています。

 あと、彼らは意外と似ていますね。走り方が似ている。スピードも似ている。だから、チームとしては予選での戦略が立てやすい。Q1とQ2のどちらにどっちのドライバーが行っても大丈夫なんです」

Q:今年のミシュランタイヤについては?

「大きくは変わってないと思います。それに私も、変わって欲しいとは思っていないです。というのも、このタイヤをどう使いこなすかが我々にとってのテーマだからです。昨年、レースの後半でタイヤが終わっていったことの原因の多くもクルマにあったわけですし。

 3月15〜16日に岡山で行った公式テストではリアタイヤにピックアップ症状(※路面に散らばったタイヤカスなどがタイヤのトレッド面に多く付着して大きくグリップダウンしてしまう症状のこと)が出たんですが、1週間後の富士での公式テストではこれがほとんどなくなっていました。岡山と同じく30周ほど走ってもタイムの落ち幅が少なかった。ミシュランタイヤも我々のBRZも、着実に熟成しています」

Q:今年のライバルは同じJAF-GT300車両のハイブリッド勢ですか?

「そうとばかりは言えません。確かにCR-Z GTやプリウスGTはそのツメを隠した状態でテストを行っていたようですが、BMWやメルセデスなどのFIA-GT3マシンも素晴らしい。ロングランをしていてもタイムの落ち幅が少ないんですよ」

Q:FIA-GT3の車両は、エンジンの排気量が大きくてパワーはあるけれど、車重が重いのでロングランは不利だという印象がありますが?

「そこを自動車メーカーの技術力で大幅に補ってきている、という印象です。"重たいからそのうちにタイヤがたれてくるだろう"という考え方は、してはいけません。ヨーロッパの自動車メーカーが真剣になって作ったシャシーはバランスが取れています。もちろん、彼らはパイプフレーム構造のJAF-GT300に対して確かに重いわけですから、苦しいとは思いますよ。でも、こちらが安易に想像するほどにはタイムが落ちないんです。グズグズしていたら、こちらが先に落ちる可能性だって十分ある。

 富士での公式テストでNo.7 BMW Z4 GT3が出した1分37秒405というタイムは、昨年、孝太がBRZ GT300で出したコースレコード(1分37秒610)を上回っています。そして1分38秒台で走っていたマシンはゴロゴロいた。ヨーロッパの自動車メーカーが本気で作ったクルマは速いんです。ヨーロッパのメーカーにとってレースは現在も市販車の開発現場なんですよ。スバルでいえば、ニュルブルクリンクで鍛えてきたインプレッサがそうですよね。

 ともあれ、今シーズンも強敵ばかり。その中で、今年の我々は勝つためのレースをしていきます。狙うのは当然、チャンピオンのみです! ご声援をどうぞよろしくお願いします!」

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