【GT300】

2014年10月 6日

スバルBRZ R&D SPORT、最後尾スタートからの追い上げを実らせて5位でフィニッシュ。地元タイからスポット参戦のi-mobile-AASポルシェ911 GT3Rは7位に

2014 AUTOBACS SUPER GT第7戦

BURIRAM UNITED SUPER GT RACE

10月5日(日) 決勝レース
チャン・インターナショナル・サーキット(タイ):全長4.554km
入場者数:予選日42,597人/決勝日75,168人(主催者発表)
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SUPER GT第7戦タイの決勝レースがドライコンディションのもとで開催されました。前日の公式予選では2位に相当するタイムをマークしながら、車両の破損に起因する意図せぬ車両規定違反が予選後の再車検において見つかったことから予選タイム抹消のペナルティを受けたNo.61 スバルBRZ R&D SPORT(佐々木孝太/井口卓人)は、最後方のグリッドからスタートすると力強い追い上げを終始展開。最終的にはスタート位置から17ものポジションアップを果たし、5位でのフィニッシュを果たしました。

また、地元タイのチームからミシュランタイヤを使用して今大会にスポット参戦し、いきなりポールポジションを奪ってみせたi-mobile-AASのNo.99 ポルシェ911 GT3R(V.インタラプバサク/A.インペラトーリ)は、決勝レースにおいてもレギュラー勢を抑えてトップを走り続けるパフォーマンスを披露。ところが、レース後半に何らかの理由によりタイヤにスローパンクチャーを抱えてイレギュラーのピットストップを強いられたことからポジションを落とすことに。それでも7位でフィニッシュし、その実力を強く印象づけた一戦となりました。

■決勝レース

降雨の可能性も指摘されていた10月5日(日)午後のチャン・インターナショナル・サーキットですが、その上空は晴天を保ち続け、決勝レースがスタートを迎えた午後3時の気温は32℃、路面温度は41℃でした。

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22台が出走したGT300クラス。その最後尾のスターティンググリッドに着いたのがNo.61 スバルBRZ R&D SPORTでした。前日の予選終了後の再車検において同車の左フロントタイヤ後方のフロアパネルが破損によって規定の車高を下回る位置にまで下がっていたことが明らかになったことから、予選で記録したタイムはすべて抹消となるペナルティを受けたためです。

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そのNo.61 スバルBRZ R&D SPORTは、これまでとは違うアプローチとセッティングで今回のレースに臨もうとしていました。まず、これまでは佐々木孝太に任せてきた第1スティントを今回は井口卓人に担当させることとしました。そして車両のセッティングも前日までのものから大きく変更。その狙いはBRZ GT300の課題である「タイヤの本来の性能を最後まで発揮させ続けること」でしたが、レース直前に確認なしで行う大幅なセッティング変更は本来ならご法度。それを承知で行ったのは、もはや失うものはなく、攻めていくのみの状況となったからこそでした。

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一方、ポールポジションには、地元タイのi-mobile-AASから今大会にスポット参戦してきたNo.99 ポルシェ911 GT3Rが着いていました。そのスタートドライバーは地元タイのブティコン・インタラプバサクが担当。アジア屈指のポルシェ使いである彼はローリングスタートもきっちり決めてトップで第1コーナーに進入。力強いドライビングによってレース序盤から後続を大きく引き離していきました。

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また、井口卓人が乗り込んだNo.61 スバルBRZ R&D SPORTもレース開始早々から見事な走りを披露していました。オープニングラップのうちに4つもポジションを上げ、その後もそもそもは不得意なはずの集団の中でのオーバーテイクを繰り返し、10周目には早くも12位にまで浮上していったのです。

ラップタイムも素晴らしいものでした。まだまだ燃料を多く積んだ状態でありながら、前走車との間にいくらかギャップがあった11周目には1分35秒811を記録。その後も1分35〜36秒台のタイムをコンスタントに並べ、30周目にはついに1分35秒を切る1分34秒864をマークしてきました。

さらに注目すべきは、周回を重ね、燃料消費によって車両重量が軽くなっていくにつれてNo.61 スバルBRZ R&D SPORTがじりじりとラップタイムを上げていったことでした。それまでのBRZ GT300は比較的早くタイヤを摩耗させてタイムを落としていく傾向が強かったのですが、今回そのようなことはなく、先にも記した「タイヤの本来の性能を最後まで発揮させ続けること」という課題をいよいよ高い次元でクリアしつつあったのです。

これにより、今回のNo.61 スバルBRZ R&D SPORTはライバルの多くよりも第1スティントを伸ばすことができ、他車が先にピットインしたことも手伝って一時は3位にまで浮上。そして35周目にピットインし、井口卓人から佐々木孝太へとバトンが渡されました。

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この時点でトップを走っていたのは依然としてNo.99 ポルシェ911 GT3Rでした。タイ人ドライバーのインタラプバサクは一度もトップを明け渡すことなく第1スティントを走り抜き、31周目を終えたところでピットへ。そして新たに乗り込んだスイス人ドライバーのアレキサンドレ・インペラトーリは、自車がピットストップしていた間に先行していったNo.3 日産GT-R NISMO GT3とNo.7 BMW Z4 GT3に迫っていくと、自力でこれらを抜き去ってトップを奪還。この週末を席巻するNo.99 ポルシェが決勝レースにおいても明らかな強さを見せつけました。

なお、ミシュランユーザーであるNo.99 ポルシェ911 GT3Rですが、そのタイヤはWEC(FIA世界耐久選手権)などのレースでの使用を想定して開発されたもので、No.61 スバルBRZ R&D SPORTが履くようなSUPER GT専用のものではありません。それでもSUPER GT用の開発タイヤを履く各車を上回るスピードを予選に続いて決勝レースにおいても発揮したわけです。ミシュランタイヤの地力の高さ・懐の深さの成せる業と言えるNo.99 ポルシェのトップ走行劇でした。

ところが、レースも終盤に差し掛かった47周目あたりからNo.99 ポルシェ911 GT3Rのペースが大きく落ちました。異物を拾ったか何かの原因による左フロントタイヤのスローパンクチャーでした。やがて同車は後続車両にかわされ、そして49周目にピットへ。タイヤ交換を行ってすぐにコースに復帰しましたが、それでも8位にまで後退を余儀なくされていました。

その後、No.99 ポルシェ911 GT3Rは先行していた1台をかわして7位でフィニッシュ。金曜日に特別に行われた練習走行に始まり、土曜日の公式練習、公式予選、日曜日の朝のフリー走行というすべてのセッションにおいてトップタイムを叩き出し、そして決勝レースにおいてもトップを突っ走ったことを考えれば残念な結果ですが、初出場にしてこれだけの戦いを見せたことはSUPER GTレギュラーチームの面々を刮目させるに十分なものでした。

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一方、35周目にルーティンストップを行ったNo.61 スバルBRZ R&D SPORTは10位で戦列に復帰しました。GT300クラスの上位陣のレース周回数は61〜60周が見込まれ、その上でBRZ GT300は第1スティントで35周をこなしたことから、この第2スティントは25周程度となります。それだけの周回数であれば、そして予選後に大幅に変更したセッティングが当たった格好の今回のBRZ GT300をもってすれば、自信を持って攻めながら走り続けることができると佐々木は確信しました。果たして、佐々木は1分34秒台の速いラップタイムを連続して叩き出し、49周目には5位にまでポジションをアップ。その後、55周目には今大会のセカンドファステストラップとなる1分33秒917をマークしていったのでした。

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5位にまで上がったNo.61 スバルBRZ R&D SPORTの次なるターゲットは当然、前を走るライバルでした。その車両であるNo.60 BMW Z4 GT3との差をじりじり詰めていき、約2秒差にまで迫りましたが、そこでチェッカーが。4位浮上は惜しくもなりませんでしたが、BRZ GT300は最後尾スタートから17台抜きを決めての5位でこのレースを終えました。

なお、レースはNo.3 日産GT-R NISMO GT3が制し、同車は今季初優勝をマーク。シリーズポイントでは、ランキングトップのNo.4 BMW Z4 GT3が今回3位に入ったことでさらにポイントを大きく伸ばし、今回5位のNo.61 スバルBRZ R&D SPORTとのポイント差は23点に拡大。これにより、佐々木孝太と井口卓人のチャンピオン獲得の可能性は残念ながら消滅することとなりました。

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井口卓人 (No.61 スバルBRZ R&D SPORT/R&Dスポーツ)のコメント:

「レースでは予想していた以上に前のクルマを抜いていくことができました。ただ、欲を言えば、レース中のもう少し早い段階からそういう状態になって前に出ていたかったところですね。

 ストレートスピードではかなりハンデがあったのですが、テクニカルなセクター2以降では僕らのBRZの優位は圧倒的でした。第1ヘアピン後の高速コーナーがBRZはものすごく速いので、まずそこで前のクルマに追いついて、その後のきついコーナーでパスするというパターンでした。当初は早めにピットストップを行うことで前に詰まらない状態を作っていこうという作戦だったのですが、いざレースを始めてみると後ろから追い上げながらでもラップタイムが良かったので、そのまま自分が長く走りました。全体として考えると、僕たちのベストは尽くせたかな、と思います」

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佐々木孝太 (No.61 スバルBRZ R&D SPORT/R&Dスポーツ)のコメント:

「金曜日のフリー走行や予選の走行からこのサーキットに対してミシュランタイヤがマッチしているのは分かっていましたが、今回はその性能をきちんと使い切れる『強いBRZ』を作ることができた。それが今回、最後尾スタートながら5位を獲得できたことの理由だと思います。金曜日の練習走行でもたくさんのデータが採れましたし、次の最終戦もてぎでもそれを生かせる。チャンピオンシップを争う権利はなくなってしまいましたけど、最終戦が今からとても楽しみです」

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スバルテクニカインターナショナル(株) モータースポーツプロジェクト室 辰己英治氏のコメント:

「今回はレース中におけるタイヤの摩耗を最小限に留めるセッティングを探し出すために、予選後に大胆なセッティング変更を行いました。昨日の(予選タイム抹消の)裁定が出た時点でこれを決定し、今朝のフリー走行で確認を行いました。すると、しっかりタイムを出しながらもタイヤが持つ状態になりました。もし、昨日出していたタイムどおりに予選2位でスタートすることになっていたらこんな大胆なことはやれませんので、すると前回の鈴鹿のように決勝ではズルズルと後退していったかもしれません。そういう意味で今回は『実戦形式のテスト』ができたと言えるかもしれませんね。そしてこれは、次のもてぎはもちろん、来年にもつながる大きな財産になったと思います。

 また、今回は井口の走りが素晴らしかった。彼は『本当に最後までタイヤが持つのか?』と半信半疑だったはずですが、きっちり答えを出してくれました。だから次のスティントで走った孝太も最初から飛ばすことができたんです」

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日本ミシュランタイヤ(株) モータースポーツマネージャー 小田島広明とのQ&A:

Q:今回、No.61 スバルBRZ R&D SPORTは予選後に大きなセッティング変更を行いました。それはタイヤにどのような影響をもたらすものだったのでしょうか?

「昨日までの段階では『走り続けるとリアが厳しくなる』というコメントがチーム側から出ていました。そして予選後の再車検失格があったことで、『これを機に、今回はテストの場として捉えよう』という提案がありました。もちろんそれはレースを諦めるというのはなく、普段できないことを試してみようという意味です。

 そして実際に行ったセッティング変更により、リアタイヤの摩耗を減らすことができました。きちんとした荷重をリアタイヤにかけ続けることができるようになり、偏摩耗を格段に減らすことができ、ラップタイムも良くなったのです」

Q:今回BRZが決勝レースで使用したタイヤは?

「レース用に2種類用意した中で柔らかめのタイヤを使いました。気温および路面温度は昨日よりも下がりましたが、十分に対応できるレンジを持ったタイヤだったと思います。決勝レース中も想定どおりの良いタイムを出せました」

Q:ところで「タイヤを使い切る」とよく言いますが、具体的にはどういった状態になることなのでしょうか?

「タイヤのコンパウンド部分のささくれ摩耗(グレイニング)がなく、路面との接触面にも偏りがない、全体的にきれいにタイヤが摩耗している状態を言います。『タイヤの面(ツラ)が良い』とも言いますね。また、タイヤカスなどを拾う『ピックアップ』がないこと。これがあると、やはり接地面積が減ってしまいます。グリップが下がればそれだけタイヤは滑りやすくなり、摩耗も進みやすくなってしまうのです。No.61 スバルBRZ R&D SPORTは今回それを大きく抑えることができました」

Q:ポールポジションからスタートし、長くトップを走り続けたNo.99 ポルシェ911 GT3Rもミシュランユーザーでした。

「残念ながら左フロントタイヤのスローパンクチャーによって順位を下げてしまいましたが、良い走りをしたと思います。彼らが第1スティントで使ったタイヤは予選で使われたものですが、決勝でも26周にわたって走り続けることができましたし、第2スティントでもスローパンクチャーを喫するまでは非常に速いタイムを出し続けていました。

 彼らが使用したのはそもそもはWEC用に開発したスリックタイヤでしたが、よりスピードレンジの高いSUPER GTでも十分に戦えて、そして高い耐久性を持っていることが今回証明されたと考えています」