【MICHELIN Talk】

2015年8月 6日

MICHELIN Talk MOTORSPORT Tips──「タイヤの皮むき」ってナニ?

  • 筆/山田弘樹(モータージャーナリスト)
  • 解説/小田島広明(日本ミシュランタイヤ株式会社 モータースポーツマネージャー)

  

SUPER GTという舞台におけるミシュランの活動を通して、タイヤに関する様々な疑問にお答えしてまいります"MICHELIN Talk"では、レーシングタイヤならではの事情や豆知識などをご紹介するショートコラム"MOTORSPORT Tips"も展開していきます。

今回のテーマは「タイヤの皮むき」です。

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SUPER GT開幕戦岡山ラウンドにおける土曜朝の公式練習でのことです。

ミシュラン・パートナーチームの2台、No.1 MOTUL AUTECH GT-RとNo.46 S Road MOLA GT-Rはこの走行セッションの終盤に新品のレインタイヤを装着してコースイン......と思いきや、その周のうちにピットに戻ってしまいました。

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実はそれは新品のレインタイヤの「皮むき」を行うための走行でした。

では、どうして「皮むき」というものを行う必要があるのでしょうか?

日本ミシュランタイヤの小田島広明モータースポーツマネージャーに質問してみました。

  

「これは市販の乗用車用タイヤも同じなのですが、製造時にタイヤにトレッドパターンをつけるときには金型を使用します。その際、金型をタイヤのゴムにそのまま押しつけると、ゴムが金型にくっついてしまうんですね。そこで、タイヤを金型から剥がしやすくするために、ゴムとの間に剥離剤を塗っているんです。

 この剥離剤は製造の都合上必要なだけで、走行時にタイヤが本来の性能を出すにあたっては不要なものです。そこで、軽く走行することでタイヤの表面についている剥離剤を剥がすのが『皮むき』なんです。

 ただし、この『皮むき』だけを目的とした走行を行うのはレインタイヤだけです。ドライコンディション用のスリックタイヤについても『皮むき』という表現は使われますが、路面が乾いていれば走り出した最初のうちさえ気をつけていれば、表面の剥離剤はすぐに剥がれて、ほどなく本来の性能を発揮できるようになります。

 一方、レインタイヤは路面のμ(摩擦係数)が小さいウェットコンディションの中で使われるものですから、表面の剥離剤もドライコンディションほどすぐには剥がれてくれず、安全の確保がよりシビアになります。そこで、剥離剤を剥がすことだけを目的とした走行が必要になるんです。ただし、その目的を果たすには何周も走る必要はなく、ピットを出た周回にピットに戻るという距離を走るだけで十分なんです」

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この「皮むき」を行うときの走行ペースはかなりゆっくりとしたものです。普段から繊細なドライビングを行っているレーシングドライバーですが、この「皮むき」走行では特に細心の注意を払いながら優しくマシンを走らせます。それは、タイヤに負荷をかけることで無用な熱を入れてしまうことを避け、新品のゴムを化学変化させないためです。タイヤのゴムは"生き物"と言われているほど、とても繊細なものなのです。

  

なお、小田島マネージャーが冒頭でコメントしたとおり、市販の乗用車用タイヤも製造時に剥離剤を使っており、新品の状態ではその表面に剥離剤がついています。ただし、それはクルマに取り付けて普通に走ることでほどなく自然に剥がれていきますので過度な心配をされる必要はありません。