【MICHELIN Talk】

2015年9月18日

MICHELIN Talk Vol.2──SUPER GTタイヤは"一冊一冊書き下ろし"のスペシャルタイヤ

  • 筆/山田弘樹(モータージャーナリスト)
  • 解説/小田島広明(日本ミシュランタイヤ株式会社 モータースポーツマネージャー)

  

SUPER GTにおけるミシュランの活動を通してタイヤに関する様々な疑問にお答えしてまいります"MICHELIN Talk"。第2回目の今回は、SUPER GTで使用されているミシュランタイヤが"特別"である由縁をご紹介します。

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■各レース専用のタイヤを毎戦開発
「SUPER GTのレースの現場でジャーナリストの方々からよくいただく質問に、『今回ミシュランはどのようなタイヤを持ち込んだのか?』というものがあります」と、日本ミシュランタイヤの小田島広明モータースポーツマネージャーは言います。
  
「そして時折ですが、そうした質問をいただいたとき、違和感を感じることがあります。というのも、その質問のニュアンスというのは、いくつかの仕様のタイヤがあらかじめ開発・製造されていて、その中から適したものを選び出してそのレースに持ち込んできたかのような捉え方をされているように思えるからなんです」
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「事実はそうではありません。SUPER GTは自由なタイヤ開発が認められているレースシリーズですから、我々ミシュランも一戦一戦のレースために専用のタイヤを開発・製造してサーキットに持ち込んでいます。本にたとえるなら、図書館にずらっと並んでいるいろいろな本の中から『今回はこれ、次はこれ』と選び出してきたものではなく、各レースに向けて一冊一冊書き下ろしたものをパートナーチームに手渡しているんです。『今回はこんな作品を書いてきました!』という感じで(笑)」
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■開発にあたっては"ニーズ"を明確にすること
自由なタイヤ開発が認められているとはいえ、実際の開発は的を絞って行っていかなければなりません。
  
「タイヤを織り成す要素は本当にいろいろあります。そして、それぞれの要素についてミシュランは実に膨大なデータを持っています。その中から、次のレースに使いたい性能のタイヤを作り出すのに最適と考えるデータを使用することによってSUPER GTのタイヤを開発しています。膨大なデータの中からどれを最適と判断して選び出すかは、ミシュランが培ってきた経験に大いに因ります」
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「何の製品でも同じですが、タイヤを作るには"ニーズ"を明確にすることが必要です。レギュレーションもレーシングタイヤが満たさなければならない"ニーズ"ですね。
そして、どういうクルマに履かせるのかを明確にします。今年のSUPER GTでミシュランタイヤを履くのは日産GT-R GT500のみですから、この点に関して今年の我々は話がシンプルですが、このマシンがタイヤに与えてくる空力的な負荷やエンジン出力による負荷への対応が"ニーズ"となるわけです。また、そのマシンを操るドライバーからの要求ももちろん考慮していきます」
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「そのタイヤを使用するレースが開催される時期の気温や路面温度、そしてサーキットの路面やコース形状に由来する負荷も考慮しなければなりません。そうした様々な"ニーズ"を確認した上で、コンパウンドによる対応か、構造による対応か、場合によってはその両方を作り替えて対処するのか、といったところを経験値に基づいて判断し、タイヤの実際の仕様を決定していくのです。そして作り出されたタイヤは、事前のテスト走行における性能確認を経て、ターゲットとするレースにいよいよ投入されるわけです」
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■各レースに用意するタイヤの仕様は基本的に2種類
「SUPER GTでは各レースにおいて各車両が使用できるタイヤの数がドライコンディション用は7セット(=28本)まで、ウェットコンディション用は9セット(=36本)までと制限されています(※注:レース距離が300kmを超える大会に関してはその都度定められます)。つまり、タイヤを闇雲に使えるわけではないので、ひとつのタイヤに多くの性能を持たせなくてはなりません」
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「1台の車両がドライ用タイヤを7セット使えるレースの場合は、2種類の仕様のタイヤを開発し、一方の仕様を4セット、もう一方の仕様を3セット用意するというのがセオリーです。
いくら開発が自由だからといって、7セットすべて違う仕様で持ち込むということはありません。もし、ある仕様のタイヤがコンディションにとてもよくマッチしていることが確認できたとしても、同じ仕様の新品タイヤはもうないことになるわけですから」
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「ただし、ターゲットとするレースにベストマッチしたタイヤを事前テストでどうしても見出すことができないままレースを迎えざるを得ないケースもあります。そういうときなどは、テストで得られたデータを最大限に活用して分析を行ったうえで、最後の決定は『えいや!』と力業を使う場合もあります。1セットだけさらに違う仕様のタイヤを用意しておくのです。つまり、「A」という仕様のタイヤを3セット、「B」という仕様も3セット用意して、「A」と「B」のどちらもベストマッチを見せない場合に備えて、決勝レースの後半スティントを"生き延びる"ためのタイヤとして「C」という仕様のタイヤを1セットを用意しておくわけです。
まぁ、こうしたケースは本当に例外的で、ほとんどのレースでは2仕様のタイヤを4セット&3セットで用意しておくことでしっかり対応することができています」
  
4セット用意するプライマリータイヤ(主タイヤ)をそのレースのコンディションに対して"外す"ことのないようにしっかりと作り込むこと。これが基本的な考え方です。
そして、そこでものを言うのがミシュランが持つ膨大なデータや経験値です。
その上で、さらに"攻めて"いき、可能性を高めていくための材料として、もう1仕様のオプションタイヤ(別案タイヤ)を用意する、ということなのです。
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■絶え間ない進化が宿命づけられたSUPER GTタイヤ
冒頭で小田島マネージャーがコメントしているとおり、SUPER GTにおいてミシュランは毎戦、そのレースのために開発・製造したタイヤをサーキットに持ち込んでいます。
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「たとえば、4月上旬の岡山国際サーキットでの開幕戦に投入したタイヤがとても良いパフォーマンスを発揮したとします。では、同じように寒いコンディションのもとで開催される11月半ばのツインリンクもてぎでの最終戦に開幕戦で使った仕様のタイヤをそのまま持ち込むかといえば、必ずしもそうとは限りません。
開幕戦の後、SUPER GTは暖かいコンディションのもとでのレースが続きますが、その中で我々が採取していく様々なデータには寒冷時に使用するタイヤに対しても有益なものがいろいろありますから、そうした要素は当然盛り込んでいきながらタイヤを進化させていくからです。また、我々のタイヤを装着するマシンの方も絶えず開発が行われ、セッティングが進んでいきますから、タイヤもそれに対応して性能を上げていかなければなりません。
SUPER GTは今シーズンであれば4社ものタイヤメーカーが開発競争を繰り広げている世界的にも希少なレースシリーズです。したがって、SUPER GTのタイヤは常に次のレースに向けて進化し続けていくことが宿命づけられている、と言うことができると思います」

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