【2015】

2015年1月27日

ミシュランの2015年WRCへの取り組み──「すべてにおいて卓越せよ」

WRC(FIA世界ラリー選手権)には総合のドライバー選手権やマニュファクチャラー選手権を筆頭に様々な選手権が設けられていますが、それらに参加するにあたって使用できるタイヤはFIA(国際自動車連盟)により公式サプライヤーとして認定されたタイヤメーカーの品のみとされています。そして2015年においてWRCの公式タイヤサプライヤーとなっているタイヤメーカーは4社。そのうちの1社がミシュランです。

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WRCで総合優勝を争うのはトップカテゴリーの車両である「ワールドラリーカー」に乗るクルーです。公式タイヤサプライヤー各社はワールドラリーカー用のタイヤをそれぞれ開発して用意していますが、どのサプライヤー(メーカー)のタイヤを使用するかは各エントラントの判断によります。つまりここには自由なタイヤ競争があると言えるわけですが、そうした中で2015年のWRCに参戦するすべての自動車メーカーのワークスチームがミシュランを選択してシーズンに臨んでいます。

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■1種類のサイズ、構造、トレッドパターンで様々なコンディションに対応

サプライヤー各社のワールドラリーカー用WRC公式タイヤには、グラベル用、アスファルト用ともに、サイズ、構造、トレッドパターンについてはそれぞれひとつの仕様しか認められていません。唯一、コンパウンドは2種類設けることができます。そして、当該シーズン中にWRC公式タイヤの仕様変更を行えるのは、グラベル用、アスファルト用ともに一度かぎりとされています。これは開発競争を完全には自由にしないことによってコストの高騰を抑えることが狙われたものですが、タイヤの側からすれば非常に難しい話です。

MICHELIN_2015_WRC_Basics_michelin-wrc-2015_07.jpg※写真は2014年ラリー・ド・フランス

 

グラベル用タイヤのことを考えてみれば、その難しさがすぐに理解できます。2015年のWRCではシリーズ全13戦のうちの9戦が未舗装のグラベル路でスペシャルステージが行われるラリーとなりますが、ひとくちにグラベルラリーと言っても、路面や地形の特性、天候や気温/路面温度といった走行条件は様々です。たとえば、6月に地中海に浮かぶサルディニア島で開催されるラリー・イタリアでは強い日差しがつきもので、地盤の上に土や砂が堆積した路面は乾き切っています。これに対して、11月に行われるラリー・グレートブリテンでは連日のように雨が降り、ぬかるんだ泥と砂利からなる路面は極めて滑りやすい状態となります。その双方で使用されるタイヤは、サイズも構造もトレッドパターンもまったく同じでなければならず、それでいてトップドライバーの要求に応える高いパフォーマンスを発揮し得るものでなければならないのです。

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MICHELIN_2015_WRC_Basics_michelin-wrc-2015_04.jpg※上の写真は2014年ラリー・イタリア・サルディニア/下の写真は2014年ラリー・グレートブリテン

 

 

■1年で1kmあたり約1秒もタイムを短縮

ミシュランが公式タイヤサプライヤーとしてWRCで活動するようになったのは2011年からですが、2015年現在、ワールドラリーカーで出場する各クルーがラリー中に使うことができるタイヤの本数は当時と比べて30%以上も少なくなっています。一方、各ラリーのスペシャルステージの合計距離はほとんど変わりありません。これはとりもなおさず、1本のタイヤがこなさなければならないステージ距離が大幅に伸びたことを意味しています。

それにもかかわらず、ミシュランは「さらなる速さ」の追求を止めませんでした。

そのことを、ラリー・グレートブリテンのスペシャルステージ「Dyfi」で記録されたベストタイムを例にとって見てみましょう。

 

2013年&2014年ラリー・グレートブリテン 「Dyfi」(21.90km)ベストタイム

ベストタイム

平均速度

ドライバー

2013年大会

(SS11)

12分51秒1

102.24km/h

アンドレアス・ミケルセン

(フォルクスワーゲン・ポロR WRC/ミシュラン)

2014年大会

(SS2)

12分25秒9

105.70km/h

セバスチャン・オジェ

(フォルクスワーゲン・ポロR WRC/ミシュラン)

 

 

2013年大会と2014年大会のどちらにおいても「Dyfi」は21.90kmのステージ距離で2度ずつ使用されました。その双方の大会における「Dyfi」1走目のベストタイムを比較してみると、2014年大会の1走目(SS2)でベストタイムを記録したセバスチャン・オジェは、2013年大会の1走目(SS11)で最速だったアンドレアス・ミケルセンより25.2秒も速く駆け抜けていたことが一目瞭然となりました。ステージ距離1kmあたりの所要時間で比較してみると1.15秒もの短縮が果たされていたのです。

MICHELIN_2015_WRC_Basics_michelin-wrc-2015_05.jpg※写真は2014年ラリー・グレートブリテン(セバスチャン・オジェ)

 

ラリー、特にグラベルラリーの場合、まったく同じステージであっても天候や路面状態などの走行条件の違いによる影響が大きく、タイムを比較する際にはそのことを考慮しなければなりません。それにしても、1kmあたりで1.15秒ものタイム短縮は相当に大きなものです。しかも、2013年から2014年にかけてワールドラリーカーの車両規則に大きな変わりはありませんでした。それにもかかわらずこれだけのタイム短縮が果たされたという事実は、ハンデとなる要素が増えるばかりの中でも「さらなる速さ」の追求を続けてきたミシュランの地道な開発努力が明らかな数字となって表れた結果と言うことができるでしょう。

 

より長い耐用距離を可能としながら、速く走るためのパフォーマンスも向上させていくこと。ひいては、すべてにおいて卓越すること──ミシュランがWRC公式タイヤの開発において行っている二律背反したテーマの追求は、市販タイヤをはじめとするすべてのミシュラン製品の開発に通じる理念「ミシュラン・トータル・パフォーマンス」の実践そのものなのです。

MICHELIN_2015_WRC_Basics_michelin-wrc-2015_06.jpg※写真は2014年ラリー・イタリア・サルディニア