【2015】

2015年2月13日

2015年WRCタイヤ&主要レギュレーション

WRC(FIA世界ラリー選手権)には様々なカテゴリーの車両に乗る様々なドライバーが出場します。その中でも上位のカテゴリーの車両が使用できるのはFIA(国際自動車連盟)により認定されたWRC公式タイヤのみと規定されています。

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タイヤのサイズおよび構造およびトレッドパターンについては、グラベル用、アスファルト用ともに、それぞれひとつの仕様しか認められていません。唯一、コンパウンドは2種類の選択肢を設けることができます。そして、当該シーズン用のWRC公式タイヤの仕様はその前年の末までにはFIAの認定を受けなければならず、また、当該シーズン中にタイヤの仕様変更を行うことは一度までしか認められないことになっています。

(※路面条件が特殊なラリー・モンテカルロやラリー・スウェーデンではそれぞれ専用のタイヤを使用することが可能です)

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なお、路面条件の変化に臨機応変に対応するためトレッド面に溝を手作業で追加するハンドカットというタイヤのチューニング手法がラリーにはありますが、WRCではこうしたトレッドパターンのモディファイ行為は禁じられています。また、いわゆるランフラットシステムの使用も禁止されており、タイヤの内側は空気によって満たされていなければならないルールとなっています。

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どのラリーにおいても各車両はスペアタイヤを2本まで搭載できることになっています。すなわち、各車両が装備しているタイヤの本数は、実際に装着している4本と、2本まで搭載が認められているスペアタイヤを合わせた最大6本となります。

  

ラリー中、新品タイヤへの換装を行うことができるのは原則的に「サービス」のときだけですが、その際に一度に入れ替えることのできる新品タイヤの本数は4本までとなっています。2011年までは各車両が装備している最大6本までのタイヤを一気に新品に交換することができましたが、2012年には5本まで、そして2013年からは4本までと削減されてきました。全体的により少ない本数のタイヤでラリーをこなすことがその狙いです。

1本のタイヤがこなさなければならないステージ距離が大幅に伸び、タイヤ開発の難しさはさらに高まることになりましたが、WRCイベント開催による環境負荷を下げ、エントラントのコスト負担を軽減するという2つの大きなメリットが生み出されています。

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○ 2015年WRC主要レギュレーション

  

参加車両

WRCにはエンジン排気量や車両に施せる改造のレベルが異なる様々なカテゴリーのラリーカーが参加しています。ただし、一切の例外なく、すべてのWRC参加車両は大量生産されている市販車をベースに製作されています。また、スペシャルステージやサービスなどをつなぐ移動区間(リエゾン)に一般交通が遮断されていない公道を使うため、ラリーカーはいずれの国かの車両登録ナンバー(ナンバープレート)を持ち、リエゾンでは競技車両といえども開催国の道路交通法に従って走行しなければなりません。

  

ワールドラリーカー

WRCの総合優勝を争うトップカテゴリーの車両がワールドラリーカーです。総合のマニュファクチャラー選手権を争う場合は必ずワールドラリーカーを使用しなければならないルールになっています。

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このワールドラリーカーの技術規則は2011年に大きく変わりました。ターボ過給のガソリンエンジンであることは旧規定と同様ですが、排気量が2ℓから1.6ℓへと縮小されたのです。世の中の流れにならってダウンサイジングが図られたわけです。また、こちらも今日的な流れを象徴する事実として、現行のワールドラリーカーはいずれも燃焼室に燃料を直接吹き込む直噴エンジンを使用しています。なお、エンジンが吸い込む空気の量を制限してパワーを抑え込むことを目的に、内径φ33mmの吸気リストリクターの装着が全車に課せられており、ワールドラリーカー各車の最高出力は315馬力程度に抑えられています。

  

1.6ℓターボへとサイズダウンしたエンジンを搭載する車体の規定寸法も旧規定より少し小さくなっており、現行のワールドラリーカーはいずれもいわゆるBセグメントのコンパクトカーをベースにしています。乗員や装備などを除いた車両の規定最低重量は1200kg。車体全幅の規定最大値は1820mmで、ノーマル状態のベース車両より100mm近くも幅広です。ワールドラリーカー各車はこれを生かして長大なホイールストロークを確保し、より良好なタイヤ接地性を実現できるようサスペンションの設計に工夫を凝らしています。

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駆動方式はいわゆるフルタイム4WDです。かつてのワールドラリーカーでは「アクティブデフ」と呼ばれた電子制御のディファレンシャル機構が用いられていましたが、開発コストの高騰を避けるために現行のワールドラリーカーでは使用禁止に。また、かつてのワールドラリーカーはセンターデフを装備していましたが、こちらも現行規定では使用が禁じられています。したがって、前輪と後輪への駆動力の配分は固定されたものとなります。そしてディファレンシャルは機械式のものが前輪軸と後輪軸に装備され、前後の左右輪の差動を制御しています。

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ギアボックスは前進6速で、飛ばしシフトはできないシーケンシャル作動のものです。そして2014年まではシフトレバーへの入力が直接シフトフォークを動かす機械式に限定されていましたが、2015年からシフト操作の入力を電気信号に置き換えてアクチュエーター等を作動させて変速を行うシステムの使用が再び認可され、ステアリングホイール付近に設けられたシフトパドルを使うことでステアリングから手を離すことなくシフト操作を行えるようになっています。

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なお、やはり開発コスト抑制策の一環として、自動車メーカーのワークスチームといえども駆動系のコンポーネントを独自に開発して使用することは現在は認められておらず、現行ワールドラリーカーのディファレンシャルシステムやギアボックスはFIAの指定サプライヤー数社が開発した数種類の中から選択したものを使用するように規定されています。

  

  

  

車両クラス区分

2014年からWRCの車両クラス区分が一新され、以下の6つのクラスによって競技が行われています。

  

■RC1クラス

<対象車両カテゴリー>

  • ワールドラリーカー(1600ccターボエンジン+φ33mm吸気リストリクター)

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■RC2クラス

<対象車両カテゴリー>

  • スーパー2000ラリー(1600ccターボエンジン+φ30mm吸気リストリクター)
  • スーパー2000ラリー(2000cc自然吸気エンジン)
  • グループR5(1600ccターボエンジン+φ30mm吸気リストリクター)
  • グループR4(※ヨーロッパ開催イベントでは対象外)
  • グループN(排気量2000cc以上)

  

■R-GTクラス

<対象車両カテゴリー>

  • グループR-GT

  

■RC3クラス

<対象車両カテゴリー>

  • グループA(排気量1600cc〜2000cc)
  • スーパー1600
  • グループR2(排気量1600cc〜2000ccの自然吸気エンジンおよび排気量1067cc〜1333ccのターボエンジン)
  • グループR3(排気量1600cc〜2000ccの自然吸気エンジンおよび排気量1067cc〜1333ccのターボエンジン)
  • グループR3T(排気量1620cc未満のターボエンジン)
  • グループR3D(排気量2000cc未満のターボディーゼルエンジン)

  

■RC4クラス

<対象車両カテゴリー>

  • グループA(排気量1600cc未満)
  • グループR2(排気量1390cc〜1600ccの自然吸気エンジンおよび排気量927cc〜1067ccのターボエンジン)
  • キットカー(排気量1600cc未満)
  • グループN(排気量1600cc〜2000cc)

  

■RC5クラス

<対象車両カテゴリー>

  • グループN(排気量1600cc未満)
  • グループR1(排気量1600cc未満の自然吸気エンジンおよび排気量1067cc未満のターボエンジン)

  

  

  

選手権

  

FIA世界ラリー選手権

WRCのメインタイトルであるFIA世界ラリー選手権には以下の3つの選手権があります。

  

■ドライバー選手権

■コ・ドライバー選手権

WRCに出場する全ドライバー/コ・ドライバーが対象で、WRC全戦における各ドライバー/コ・ドライバーの獲得ポイントの合計によって争われます。

  

■マニュファクチャラー選手権

ワールドラリーカーを使用し、シーズン開幕前に同選手権への参加登録を行ったチームが対象で、その所属ドライバーのWRC全戦における獲得ポイントの合計によって争われます。

  

  

【WRCのポイントシステム】

■ドライバー選手権およびコ・ドライバー選手権の場合

各ラリーの最終の総合順位に基づいて、1位=25点、2位=18点、3位=15点、4位=12点、5位=10点、6位=8点、7位=6点、8位=4点、9位=2点、10位=1点がそれぞれ付与されます。

また、各ラリーのスペシャルステージのひとつは「パワーステージ」という名称の特別なステージとして実施されます。このパワーステージでトップタイムを出したドライバー/コ・ドライバーには3点、2番手には2点、3番手には1点がラリーの総合成績に関係なく付与されます。

  

■マニュファクチャラー選手権の場合

シーズン開幕前に同選手権への参加登録を行ったチームの車両のみによる最終順位に基づいて、ドライバー/コ・ドライバー選手権と同じ採点法によってポイントが付与されます。ひとつのラリーにおける各チームのマニュファクチャラー選手権ポイントの獲得対象は各ラリーの前に登録した2台までとなります。

  

  

サポート選手権

WRCではワールドラリーカーより下位のカテゴリーの車両を使用して争われる様々なサポート選手権が設けられています。

  

WRC 2(FIA WRC2選手権)

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4輪駆動のグループR5、スーパー2000、グループN4のいずれかのカテゴリーの車両を使うエントラントを対象としたサポート選手権です。2015年はWRC全13戦において開催されますが、エントラントはシーズン開幕前に同選手権への出場登録を行い、その際に同選手権のポイント獲得対象とするイベント7戦を指定。そのうちの上位6戦分の獲得ポイントの合計によって順位を争います。ドライバー選手権、コ・ドライバー選手権、チーム選手権が設けられています。

なお、2014年はミシュランタイヤを履くフォード・フィエスタRRCでシリーズ参戦したナッサー・アルアティヤがチャンピオンを獲得しました。

 

WRC 3(FIA WRC3選手権)

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2輪駆動のグループR3、グループR2、グループR1のいずれかのカテゴリーの車両を使うエントラントを対象としたサポート選手権です。2015年はWRC全13戦において開催されますが、エントラントはシーズン開幕前に同選手権への出場登録を行い、その際に同選手権のポイント獲得対象とするイベント6戦を指定。そのうちの上位5戦分の獲得ポイントの合計によって順位を争います。ドライバー選手権、コ・ドライバー選手権、チーム選手権が設けられています。

なお、2014年はミシュランタイヤを履くシトロエンDS3 R3Tでシリーズ参戦したステファン・ルフェーブルがチャンピオンを獲得。ルフェーブルは併せて出場登録していたジュニアWRC(後述)でもチャンピオンに輝きました。

 

ジュニアWRC(FIAジュニアWRC選手権)

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若手育成を理念に掲げたサポート選手権で、以前にワールドラリーカーでWRCに出場した経験のない26歳以下のドライバーが対象です。2001年から開催されてきましたが、2014年からシトロエンDS3 R3Tとミシュランタイヤのワンメイクによって行われています。2015年はWRC7戦で開催されますが、エントラントはシーズン開幕前に同選手権への出場登録を行い、その際に同選手権のポイント獲得対象とするイベント6戦を指定。その6戦分の獲得ポイントの合計によって順位を争います。ドライバー選手権とコ・ドライバー選手権が設けられています。

なお、2014年はミシュランタイヤを履くシトロエンDS3 R3Tでシリーズ参戦したステファン・ルフェーブルがチャンピオンを獲得。ルフェーブルは併せて出場登録していたWRC 3でもチャンピオンに輝きました。

 

R-GTカップ(FIA R-GTカップ)

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グループR-GT規定のラリーカーを使用するエントラントによって全5戦で争われるもので、2015年が開催初年度となります。開催される5つのラリーのうち、3戦(ラリー・モンテカルロ、ラリー・ドイツ、ツール・ド・コルス)はWRC、2戦(イプルー・ラリー、ラリー・デュ・ヴァレ)はERC(FIAヨーロッパ・ラリー選手権)のイベントで、この5戦分の獲得ポイントの合計によって順位が争われます。

 

  

  

ラリーの仕組み

ラリー競技を構成する代表的な区間/時間帯についてご紹介します。

  

【標準的なWRCイベントの日程】

  • 火曜日 レッキ
  • 水曜日 レッキ/車両検査
  • 木曜日 シェイクダウン/セレモニアルスタート(→スペシャルステージ)
  • 金曜日 ラリー(デイ1)
  • 土曜日 ラリー(デイ2)
  • 日曜日 ラリー(デイ3)/フィニッシュ

  

  

レッキ

MICHELIN_2015_WRC_Basics_regulations_14.jpgラリー本番を前に、各エントラントが行うスペシャルステージの事前試走が「レッキ」です。ラリー本番車は使用できず、グループN以下の仕様の車両で実施します。

レッキにおいて各スペシャルステージを走ることができるのは2回までで、ペースノート(スペシャルステージでタイムアタックを行う際にコ・ドライバーが読み上げるコース情報をまとめたノート)はこの2回の走行で作り上げなければなりません(各エントラントはレッキとスペシャルステージ実施時以外の時間にコースを走行することは禁じられています)。

また、レッキ実施時のコースの走行速度は主催者によってリミットが定められており(多くは60km/h以下)、レッキ走行中の各エントラントの位置やスピードはGPSによって厳格に監察されています。

  

  

シェイクダウン

ラリー直前の公式テストセッションが「シェイクダウン」です。2012年と2013年のグラベルラリーにおいては、ラリー初日(デイ1)のスタート順を決定する"予選"として開催されましたが、2014年にレギュレーション変更があり、ラリー本番を前にした最終確認走行という本来の在り方に立ち戻ったものとなりました。

  

  

スペシャルステージ

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ラリーカーが全開走行によるタイムトライアルを行う競技区間が「スペシャルステージ」です。10分の1秒単位までタイムが計測されます。

1本の距離が10km前後から30km前後のものが大半ですが、多くのラリーがその大会の勝負所とすべく50km近くになるロングステージを1〜2本設けています。そして現在のWRCにおける各ラリーは、スペシャルステージの合計距離が300km〜400km程度となるように組み立てられています。

  

なお、スペシャルステージの大半は山や森の中を行く道を用いて設定されますが、公園やスタジアムなどの施設を利用してコースが作られ、距離は短いながらも多くの観客がラリーカーの走行を観戦できる趣向の特別なスペシャルステージが多くのラリーで設定されており、それらは通常のスペシャルステージとの差別化を図るために「スーパーSS」と呼ばれています。

 

  

【スペシャルステージのスタート順

MICHELIN_2015_WRC_Basics_regulations_16.jpgラリーは1台ずつタイムトライアルを行っていく競技ですが、特にグラベルラリーでは大概の場合、各スペシャルステージを真っ先に走るクルーほど不利な状況を強いられます。路面の表面に砂やダストが多く堆積した状態のところを走らねばならず、その後から出走した車両ほどのグリップを得にくいためです。

このスペシャルステージのスタート順決定方式が2015年は新しくなりました。具体的には、土曜日(デイ2)の最後のスペシャルステージまでは前戦を終えた段階でのドライバーズポイントランキングの順にスタート。そしてラリー最終日である日曜日(デイ3)だけは、土曜日(デイ2)の最後のスペシャルステージ(スーパーSSを除く)を終えた時点での総合成績で上位につけるエントラントは総合成績とは逆の順でスタートするという取り決めで行われています。

  

  

サービス

MICHELIN_2015_WRC_Basics_regulations_17.jpgラリー競技中、ラリーカーがメカニックによる整備を受けることができる唯一の時間帯が「サービス」です。車両が装備している最大6本のタイヤ(車両装着4本+2本まで搭載が認められているスペアタイヤ)のうち4本を新品と入れ替えることができるのもこの時間帯だけです。

サービスは1日に約3回設けられますが、スペシャルステージに出かけていく前の朝一番のサービスではメカニックによる整備作業は禁じられており、このとき行えるのはタイヤ交換や安全点検などの軽作業のみとされています。

ワールドラリーカーを使用するチームの場合、サービス中に同時に車両に触れることができるメカニックは8名までと制限されています(ドライバーとコ・ドライバーはこれには含まれません)。

  

  

リエゾン

MICHELIN_2015_WRC_Basics_regulations_18.jpgスペシャルステージやサービスなどをつなぐ移動区間が「リエゾン」です。一般交通が遮断されていない一般道を使うことがほとんどで、ラリーカーは競技車両といえども開催国の道路交通法に従って走行しなければなりません。スピード違反などによって警察に停車を命じられ、罰金などを課されることも実際にあります。その反面、次のチェックポイントに指定時刻までにたどり着けなければ、1分の遅延につき10秒のペナルティタイムがラリーの総合タイムに加算されることになります。

  

  

リタイア→再出走(ラリー2規定)

土曜日(デイ2)の最後のスペシャルステージまでにリタイアを喫してしまった場合、指定された時刻までに車両を走行可能な状態にして認定を受けることができれば、翌日から競技に再び参加できるというレギュレーションがあります。これが「ラリー2規定」です。走行できなかったスペシャルステージ(リタイアしたステージを含む)における該当クラスのトップタイムに7分のペナルティタイムが上乗せされますが(10分の場合もあります)、総合成績から除外されることなく競技を続けることができます。ただし、最終日にリタイアしてしまった場合は総合成績からも除外された完全なリタイアとなります。