【2015】

2015年10月26日

トップ独走のオジェが最終ステージでクラッシュ! アンドレアス・ミケルセンがWRC初優勝を飾る!

2015年WRC(FIA世界ラリー選手権)第12戦 ラリー・スペイン

■スタート:10月22日(木)/フィニッシュ:10月25日(日)
■スペシャルステージ:23本(331.25km)/総走行距離:1280.72km
■ステージ路面:グラベル/アスファルト

  

グラベルとアスファルト──今年もラリー・スペインはタイプがまったく異なる路面のスペシャルステージを一戦のうちにこなすミックスサーフェイスイベントとして開催されました。この特殊なラリーの大半を支配したのは今シーズンのドライバーズタイトルをすでに決めているセバスチャン・オジェ(フォルクスワーゲン・ポロR WRC)でしたが、後続に50秒を超えるリードを築いて迎えた最終ステージでクラッシュを喫してリタイアしてしまうという事態に。これにより、最後の最後で順位が繰り上がることになったアンドレアス・ミケルセン(フォルクスワーゲン・ポロR WRC)がキャリア初となるWRC総合優勝を飾りました。

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今年もラリー・スペインのオープニングステージは大都市バルセロナの中心部で実施されました。美術館やオリンピックスタジアムなどがあるモンジュイック地区に設けられた3.20kmの舗装路のコースをグラベル仕様のサスペンションとタイヤでアタックするもので、セバスチャン・オジェが鮮やかにトップタイムをマークしました。

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一夜明けた10月23日(金)は4本のグラベルステージに2回ずつアタックしていくという構成。その序盤をリードしたのは、元F1ドライバーで、ワールドラリーカーのエントラントでは数少ないピレリタイヤユーザーのひとりであるロバート・クビサ(フォード・フィエスタRS WRC)でした。彼はこの日最初のSS2で2番手タイムを刻み、SS3ではトップタイムを叩き出して総合トップに立ちます。そしてSS4も4番手タイムでまとめて首位の座をキープし続け、グラベルでもトップレベルのスピードを有していることを印象づけました。

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ただし、クビサは今大会で最も長い35.68kmのSS5「Terra Alta」で立て続けに2本のタイヤをパンクさせ、トップ争いからあえなく脱落してしまいました。また、この「Terra Alta」には途中にアスファルト舗装の区間が2カ所あり、そこをグラベルタイヤでハードに攻めていった結果、タイヤを想定以上に摩耗させてタイムダウンを喫してしまうドライバーが続出しました。

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そんなSS5を最速で駆け抜けたのはヤリ‐マティ・ラトバラ(フォルクスワーゲン・ポロR WRC)で、彼から4.1秒遅れのセカンドベストをチームメイトのオジェがマーク。そして、1番手走者であるために路面の掃除役のハンデを負い続けてきたはずのオジェがここで総合トップに立ち、0.8秒差でラトバラが続くというオーダーに変わりました。

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このSS5の後、各車はタイヤフィッティングゾーンで装備タイヤを新品に入れ替えました。ただし、メカニックによる整備を受けることができる「サービス」はこの日中にはない設定とされており、各車は午前中に走った4本のステージを再走する午後にもいわばノーメンテナンスの状態で臨んでいかなければなりませんでした。

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一端は総合トップに立ったオジェでしたが、午後のステージ群に入るとややポジションを下げました。2回目の走行となる各コースの路面には1走目のときのような浮き砂利はありませんでしたが、オジェは途中にアスファルト舗装の区間がある「Terra Alta」を再走するSS9を勝負所と見込み、そこまではタイヤを極力いたわって走る作戦に出たのです。果たして、SS8を終えたところで総合トップにはラトバラが立ち、オジェは3.2秒差の3位につけていました。

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そして迎えたSS9「Terra Alta 2」。このステージでは5カ所で区間タイムが計測されており、セクター2までの最速はMスポーツ・フォードのオット・タナク(フォード・フィエスタRS WRC)が記録。オジェはタナクから0.6秒遅れの2番手でセクター2を抜けていました。

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しかし、中間のセクター3でオジェはタナクと同タイムに並びました。そして、タナクをはじめとする多くのドライバーがステージ後半に入るとタイヤを消耗させてタイムダウンしていく中、オジェはペースを落とすことなくアタックを続けて圧倒的なトップタイムを叩き出します。2番手タイムはラトバラが記録しましたがオジェのタイムには7.2秒も届かず、ここでオジェが一気に総合トップへと返り咲きました。

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その後、今大会の各出場車両はこの日の最終サービスに入り、舗装路仕様からグラベル仕様へと変更する一大作業を受けました。タイヤももちろんグラベル用からアスファルト用に変わり、トップカテゴリーのワールドラリーカーのタイヤは15インチから18インチに。車高がぐっと下がり、各車の雰囲気が一変しました。

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10月24日(土)のデイ2と25日(日)のデイ3には合計14本のスペシャルステージが用意されていましたが、それらはすべてアスファルト舗装のステージであり、1番手スタートであることに弊害はありません。したがって、グラベルステージで構成されたデイ1を総合トップで乗り切ったオジェに、もはや不安材料はありませんでした。

  

実際、オジェはデイ2最初のSS10でラトバラに2.4秒差をつけてトップタイムを奪うと、続くSS11でも一番時計をマークしてきました。そしてSS12ではラトバラがコーナーをインカットした際にホイールを舗装の角に打ち付け、それによってタイヤの空気を失ってしまったことで大幅なタイムロスを喫します。これでオジェのリードは一気に50秒以上に拡大することになりました。

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リスクを冒す必要はなくなったオジェでしたが、それでもSS15やSS17ではトップタイムをマークしてしまうという速さ&強さでした。そして後続に50.9秒という十分すぎるマージンを保って最終のSS23を迎えました。

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ところが、12.10kmの最終ステージにおいて誰も予想していなかった事態が発生しました。左コーナーにオーバースピードで進入したゼッケン1のフォルクスワーゲン・ポロR WRCがアウトに膨らんでガードレールにヒット。右フロントサスペンションが破壊された車両からはホイール&タイヤがちぎれ飛び、オジェはその場でリタイアする以外に選択の余地のない状態となってしまったのです。

  

これにより、2位でのフィニッシュであったはずのアンドレアス・ミケルセンが2015年ラリー・スペインのウィナーに。26歳のノルウェー人ドライバーがキャリアを通じて初めてとなるWRC総合優勝を手にしました。

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こうした結末は当のミケルセンにとっても予想外のものでしたが、しかし、繰り上がって優勝を手にすることができる位置につけていたことは彼の実力によるものでした。

  

ミケルセンは、チームメイトのヤリ‐マティ・ラトバラに遅れること2.9秒の3位でラリー最終日のデイ3を迎えていました。そして、この日最初のスペシャルステージであるSS18において今大会で初めてのトップタイムを叩き出し、SS19でも一番時計を記録。SS20ではラトバラがやり返してトップタイムを奪いましたが、ゼッケン2のフォルクスワーゲン・ポロR WRCを駆るフィンランド人ドライバーはSS21でインカット時にホイールを舗装の角に悪い形でヒットさせてスローパンクチャーを招くというミスを再び犯してしまいタイムダウンを喫します。ところが、SS22では今度はミケルセンがスピン。かくして、ミケルセンがラトバラを1.4秒というわずかな差でリードした状態で最終のSS23を迎えることになったのでした。

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この最終ステージに限ってはワールドラリーカーに乗るエントラントをリバースオーダーで出走させる趣向となっており、トップ3の中では3位につけていたラトバラがまずスタート。12.10kmのこのステージで7分53秒6というタイムを記録しました。

続いてミケルセンがアタック。ラトバラを1.7秒上回るタイムを叩き出し、先輩ドライバーに対するリードを3.1秒に広げてラリーをフィニッシュしました。

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そして、彼らの後にオジェがこの最終ステージに出走し、先述のクラッシュを喫したのでした。ラトバラとの熾烈な2位争いを制した喜びを味わっていたところへオジェのクラッシュの報を受けたミケルセンでしたが、自分のWRC初優勝が決まったことを知らされても、にわかには信じられない様子でした。

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また、オジェの土壇場でのリタイアによってフォルクスワーゲン勢のトップ3独占はならず、ミケルセンとラトバラに続く3位にはダニエル・ソルド(ヒュンダイ i20 WRC)が入り、彼はシトロエン C4 WRCで戦った2010年大会以来となる母国イベントでの表彰台登壇を果たしました。

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ただし、マッズ・オストベルグ(シトロエンDS3 WRC)とクリス・ミーク(シトロエンDS3 WRC)のシトロエン勢が5位&6位に入ったことから、マニュファクチャラー選手権の2位争いではシトロエンがヒュンダイに対するポイント差を4点に広げることに。この2つの自動車メーカーは最終戦のラリー・グレートブリテンで雌雄を決することになります。

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WRC2選手権ではポンタス・ティドマンド(シュコダ・ファビアR5)が優勝を飾りました。このサポート選手権では、ミシュラン、ピレリ、D-Mack、ハンコックの4社によってタイヤ競争が繰り広げられていますが、ミシュランユーザーが今季開催9戦のうち8戦で勝利を挙げることになりました。

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そして、今大会においてクラス3位でのフィニッシュを果たしたナッサー・アル‐アティヤ(シュコダ・ファビアR5)が最終戦ラリー・グレートブリテンを待たずに今シーズンのWRC2選手権チャンピオンを決定。活発なタイヤ競争が展開されている同選手権においてもミシュランユーザーがタイトル獲得を果たしました。

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2015年WRC(FIA世界ラリー選手権)第12戦ラリー・スペイン

[最終結果]

  1. アンドレアス・ミケルセン(ノルウェー) フォルクスワーゲン・ポロR WRC
  2. ヤリ‐マティ・ラトバラ(フィンランド) フォルクスワーゲン・ポロR WRC
  3. ダニエル・ソルド(スペイン) ヒュンダイ i20 WRC
  4. マッズ・オストベルグ(ノルウェー) シトロエン DS3 WRC
  5. クリス・ミーク(イギリス) シトロエン DS3 WRC
  6. ヘイデン・パッドン(ニュージーランド) ヒュンダイ i20 WRC
  7. マーチン・プロコップ(チェコ) フォード・フィエスタRS WRC
  8. ティエリー・ヌービル(ベルギー) ヒュンダイ i20 WRC
  9. ポンタス・ティドマンド(スウェーデン) シュコダ・ファビアR5(WRC2優勝)
  10. ロバート・クビサ(ポーランド) フォード・フィエスタRS WRC